« 2008年に鑑賞した美術展一覧 | トップページ | ボローニャのサン・ドメニコ教会 Basilica di San Domenico② »

2009年1月 8日 (木)

一人の日本人コレクターによって蒐集された美しい西洋版画

F_2 昨年12月の事ですが、一人の日本人コレクターにより蒐集された西洋版画、しかもデューラーからルーカス・クラーナハ、ブリューゲル、レンブラントさらにはジャック・カロまで見られるというので、これは行かなくてはと、初めて”八王子市夢美術館”を訪れました。

八王子からバスで3つ目(だったかな?)の停留所で下車。初めての美術館は、いつもわくわくします。大きな道路を横断し、近くをきょろきょろ。ホームページではビルの2階と書かれていたので、近くの大きなビルに向かう。当たり!入り口は明るい日差しを受けて気持ち良いし、受付の方も感じ良く、こんなかわいい美術館を知っただけでも満足でした。

R

さて、中に入ると、ズラーっと並んでいる版画にびっくり。点数もかなりあり(160点と後で知る)そうですし、内容も最初から驚き。ションガウアーから始まり、デューラー、クラーナハ、ボス、ブリューゲルなどと超有名な画家の版画が続いているのです・・・す、凄い!

先ず、デューラー(1471-1528)「黙示録 第8章より」で足を止める。彼の版画の線の細かさは「メランコリア」などでおなじみですが、1498年当時27歳だった彼が最初に書物の体制で出版した版画が「黙示録」。この大成功により、彼の名声はヨーロッパ中に響くようになったそうです。彼の作品を好きな方は多いですよね。

Durer_apocalyps8 彼の木版画(そう、これは木版画でした!)はかなりの革新性に溢れていたようです。その独自性は、置かれていた説明書によりますと、

①作品の大きさ: 当時の版画は、文章の一部にはめ込まれるのがほとんど。当時の紙漉き技術や版木の事情から考えて、「黙示録」の縦40cm横30cmは最大限の大きさだそうです。

②出版物としての特異性: 通常、版画を書物の挿絵とする場合、版元が下絵師や刷り師に依頼して作っていたが、デューラーはそれらを一人で全てを行った。

③木版画としての革新性: それまでの版画の線は、物の輪郭線やエリアの境界線。ところがデューラーは、木版画ですばらしい立体感を表現した。これは、旅行で訪れたイタリアルネッサンスの影響。

改めて、デューラーの偉大さを思い知った次第です。上のパンフレットの表紙の版画もデューラー作「三日月上の聖処女マリア」。

Cranach_chrysostom 題材として興味を持ったのは、クラーナハの「聖ヨハネス・クリュソストモスの苦行」という作品(左の画像)。

この聖人は、一人の娘と通じて子をなしたが、二人を殺して埋めてしまった。それを悔いて、罪が赦されるまで絶対に口をきかず、天に顔を向けないと誓ったという。彼の罪が赦されたとき、殺された二人が発見される、という話。

版画の右端で、地面に手をついている裸の小さく描かれている人物が聖人で、手前に大きく描かれている裸婦と赤ちゃんが発見された親子だとか。

人を殺しても聖人になれるんですね!驚きです!この話が忘れられなくて、帰宅後、黄金伝説でこの聖人を探してしまいました。4分冊中まだ1冊しか購入していないのですが、その中になんとこの聖人がいらっしゃったのです!

Goltzius_adration 真実かどうか不明の逸話満載の黄金伝説ですが、残念ながらこの聖人には、前述のような話は書かれていませんでした。ただし、「温厚というよりはむしろ激越であり、信念を貫くためには石橋をたたいて渡るということはしなかった。」と書かれていまして、かなり激しい性格の人で、その人生も波乱万丈だったようです。上の話が無かったのは、良かったのかもしれませんが、ちょっとがっかり。

その他、ボス「盲人の手を引く盲人」、ピーテル・ブリューゲル(父)「最後の審判」「七つの大罪」、ヘンドリック・ホルツィウス「羊飼いの礼拝」(右の画像。作成途中とはいえ、美しい作品です。”一定のエリアごと掘り込んでいく”というエングレーヴィングの制作過程が分かるとか。) レンブラント「口ひげをたくわえた男の肖像」、ジョルジオ・ギージ Giorgio Ghisi(驚くべき細かい彫り)。

Callot_temtation やっと出てきました、ジャック・カロ!「戦争の惨禍」「インプルネータの市」(カロでは、こんな大きな版画は初めて)、「聖アントニウスの誘惑」(左の画像、奥行きのある見事な作品)、ピラネージ、ゴヤ、ドーミエ、ルドン・・・

このコレクターは50年前からこつこつと集めて来られたという。つまり1958年頃から集めていたわけで・・・東京オリンピック以前の時代から西洋版画の美しさを知り、惹かれ、集め始めていたということは、きっと家柄も良く、相当の見識があり、財政的にも豊かだった方なのでしょうね。

私達のような一般人に、苦労して集め、大切に温めてこられた価値ある作品を一同に公開してくださったことは、ほんとうに有難い事です。

|

« 2008年に鑑賞した美術展一覧 | トップページ | ボローニャのサン・ドメニコ教会 Basilica di San Domenico② »

海外美術 L'art étranger」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/204923/43639837

この記事へのトラックバック一覧です: 一人の日本人コレクターによって蒐集された美しい西洋版画:

« 2008年に鑑賞した美術展一覧 | トップページ | ボローニャのサン・ドメニコ教会 Basilica di San Domenico② »