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2008年11月16日 (日)

聖母だけを讃えた最初のタンパン スイヤック③ Souillac

昨日のこと、久しぶりにしたゴルフの打ちっぱなしから帰ってきた夫に何気なく尋ねました。「どうだった?」「大変だよ!」「どうしたの?」「ボールが当たらないんだよ・・・」「えっ?」 一応これでも、若い頃からゴルフはしているのですが・・・

スイヤックの話を続けたいと思います。

Soui_map 過去2回(Souillac①,  Souillac②)の記事を見てみますと、あの衝撃的な柱彫刻に話が集中してしまっていて、まだスイヤックの場所も内部の写真もアップしていませんでした。

この教会の正式名称は、SouillacのAbbatial sainte marie、場所はフランス西南部でして、南はカオール、トゥルーズと道が続いています。カオールの教会にもこのSoullacと同じようにドームがあり、さらにフレスコ画や回廊もあってとても気に入りました。ここも早めに書きたいと思っている教会です。(といっても、何時になるやら・・・)

Chevet01 この写真では、屋根のドームが見えますね。同じような形のドームがあと2個後ろに繋がっています。後陣の外観は、円形の屋根を持った小祭室を持っっていて、一見オーヴェルニュ地方のにも似ているように思えますが、あまり装飾がありませんね。でも、シンプルに整っていて美しいです。

身廊に沿った外壁は、平面的で要塞のように直線的に高くなっていて、味気なく感じたのですが、これも修復したためでしょうか?

Soui_inte3 教会の横から入る入り口も、2回の記事に示したように味気ないものでした。さらに右の写真のように、教会内部もさっぱりしていますが、大きなアーチの中に3個の小さなアーチが収まっていて、それなりにハーモニーを保っています。(右の写真は、祭壇あたりから出口方向を撮ったものです)

でも、内陣に面白い柱頭彫刻がありました(次回写真をアップします)し、パイプオルガンの下には、今まで書いたような柱彫刻と、今日お話したい、かつて破壊以前はタンパンであった浮彫りがあるのです。

エミール・マールによれば、元はもっとたくさんの彫刻があった中の一部分なのだのそうで、その価値は、”聖母マリアだけを讃えた最初の彫刻だ”、という事なのです。

Soui_timp1

両側に座しているのは、向かって右側にSaint Pierre(聖ペトロ、右手に鍵を持っている)で、左側がSaint Benoit(聖ベネディクトゥス、右手に杖を持ち、左手には彼が書いた修道院の戒律本を持っている)です。

問題はこの中央の彫刻でして、題は「テオフィロスの奇跡」と言い、東方から伝わり、13世紀には非常に有名になった題材なのだそうです。内容は、マールに書かれているのと、現地で購入した小冊子の状況設定が少し異なるので両方書いておきます。

Theophile04 『修道士テオフィロスは、Adana de Cilicie(地名らしい)の教会の会計係をしていたが、新しく赴任してきた司祭によって解任されてしまった。役職に戻りたい彼は、悪魔と関係を持ち始め、権力と彼の魂とを交換する契約を結んでしまった。(マールでは、助祭だったテオフィロスが、自分が仕える司教の地位を奪いたいと願い、悪魔と契約した、となっている)。

彼は職務の復活と共に栄光に満ち溢れたにも係わらず、不幸、不安の苦しみや後悔にさいなまれ、断食を始め、さらに聖母マリアに助けを求めた。すると、彼女は悪魔から契約の巻物を取り返し、彼に返したのだった。』

これを”聖母の奇跡”というのだそうです。右の画像の上方、雲間からたくさんの天使に支えられてマリアが降りてきているのが見えます。

上部にある雲が劇場を飾る幕のように見え、そこから現われるたくさんの天使が、マリアの出現を劇的場面に仕上げているようです。

Theophile02

上の写真右側では、悪魔がテオフィロスの手を包み込むようにしています。これはテオフィロスが悪魔の家臣になった事を示しているのだそうです。左側では2人が、巻物状の契約書をめぐって交渉しています。大きくした映像を見ると、ほんと、怖そうな悪魔ですね。

エミール・マールは「ロマネスク図像学下」の211ページで、悪魔について次のように書いてます。

『悪魔は干乾びた死体に似ていて、羊皮紙のような皮膚の下に骨と筋を浮かび上がらせている。彼は死者の世界から来たかのようである。その顔はもはやどこをとっても人間のものではない。膜が顎と首をつないでいて、まるでひき蛙のようである。鼻は牛の鼻のように広がっており、恐ろしい目は眼窩の奥にはめ込まれている。背中についた小さな翼は、今は獣以下の存在になったこの怪物が、かつては天使であったことを思い出させる。』

なかなか終わりません、このSouillac・・・くどくど書きすぎるのがいけないんですね・・・。次回、イザヤの浮彫と内陣の柱頭彫刻の写真で終わらせることにします。

スイヤック関連記事:
   驚くべき柱彫刻 Souillac①
   柱彫刻説明修正 Souillac②
   イザヤ像と柱頭彫刻 Souillac④

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フランスの教会 Les eglises de la France」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ
こちらもゴルフに行ってきました。
cojicoさんのブログは、ヨーロッパの歴史を学べるので勉強になります。
若い時、女性を口説こうと(冗談ですが、すこし本音)ギリシャ神話やヨーロッパの勉強をしたのですが、忘れますね。旅に行く前は、少し情報を仕入れていきますが、やはり、関心事は”食”と酒にいきます。
「テオフィロス」も皇帝・・?出家して司教・・?やはり、西洋の歴史を知れば、旅が数段楽しくなるのに・・と思います。
cojicoさんはフランスが似合いますね・・と言うよりフランスを楽しんでおられるように思います。彫刻や建築物など大好きなんですが、そして、行った先では、必ず、一通り観て回るのですが、記憶から遠くなる。
もっと勉強しとけば・・・後悔先に・・です。
今の季節、フランスも冬支度でしょうか。
ゴルフは、ロンドンで連日、練習しましたのでスコアはまとまってきました。・・・・気分は石川遼くんになっています。

投稿: kju96 | 2008年11月17日 (月) 01時23分

kju96さん
何事も始めるには、その動機が不純なほど長続きしたりして・・・
結構、そうなのかもしれませんね。しかも若いときに読んだ内容って結構覚えているものなので、きっとkju96さんの記憶も、あるきっかけでどどどっとあふれ出るかもしれませんね。いえ、kju96さんのブログを読みますとすでにあふれ出ていますよ。

悲しいことに、最近読んだものは片っ端から忘れていきます。覚えておきたい事柄などを書き留めていても、後で見直すと書いた内容は全然覚えていなくて、ショックを受けることもしばしばです。
こうやって書いておけば忘れないかと、期待しているのですが・・・

主人のゴルフはもうほんとに笑ってしまいます。石川遼くんですか・・・kju96さんの爪の垢を煎じて飲ませてあげたいです。

投稿: Cojico | 2008年11月17日 (月) 19時05分

こんばんわ
今週末に東京に入り、それから27日、ウィーンに入り、ウィーンを拠点に、東欧や発展途上のヨーロッパ諸国を見学に行きます。3ヶ月の長丁場・・・何があるのやら楽しみにしております。特に、主要都市でのコンサートは楽しみです。晩秋から冬場にはいりますのでヨーロッパらしいのではと思っております。主要都市の建造物も今回はじっくりとは行きませんが、一通りミーハー程度は、見学したいと思っています。多分、スケジュールどおりには行かないと思いますが、行き当たりばったりの旅も良いのだとおもっています。
沢山情報収集できるようにと思っております。
しばらくお休みします。ありがとうございました。
お体には気をつけて、来年は、今年以上に幸せでありますように。

投稿: kju96 | 2008年11月19日 (水) 23時43分

kju96さん

楽しい楽しい旅行を願っております。
kju96さんの事ですから、普通の旅ではないのはわかりますが、いったい、どのような日々になるのでしょう?
音楽を味わい、地方色豊かなお酒、料理などを楽しんでいる姿は想像できます。
でも、3ヶ月も旅行を続けるなんて、私には想像もつきません。
日本人らしくない、豪快な旅行をしてきてください。
首を長くして待っております、kju96さんの楽しい旅行談を!
でも、先ずはそんなこと忘れて、いえ日本の全てを忘れて、十分にヨーロッパの世界に浸ってらしてください。
Buon Viaggio!

投稿: Cojico | 2008年11月20日 (木) 14時50分

ご無沙汰しています。
ボーリュウの次に寄ったのがここでした。
臣従の礼をとるテオフィルスの背後の教会や聖母がシャガールの絵のようで面白いです。
左の聖ブノワの足元の彫刻、こんなに不気味な生き物は見たこと内です。

投稿: Pirvs Lvdens | 2008年11月29日 (土) 21時31分

Pirvsさん
こんばんは。コメントありがとうございます。

>・・・背後の教会や聖母がシャガールの絵のようで面白いです。
なんとすばらしい表現でしょうか!ほんとにそうですね!
浮き彫りがなんだか生き生き見えてきました。

聖ブノワの足元・・さすがPirvsさん、細かい所にも気が付きますね。
説明ばかりに気を取られ、よく見ていませんでした。
この部分だけを撮った他の写真を見たのですが、写真の質が悪くてはっきりしません・・・なんだか、2つ、生き物の首のようなものが出ていますが・・・
右のサン・ピエールの足元は、モワサックのトゥリュモーと同じと考えていいんですよね。

Pirvsさんのサイトに、このスイヤックのこと、書かれていましたでしょうか?忘れましたので、また覗いてみますね。
それと、次回ボーリューの事を書きたいと思っています。もう内容は大体決めたのですが、Pirvsさんの記事も参考させていただきたいと思います。

投稿: Cojico | 2008年11月29日 (土) 23時34分

Pirvsさん
今、寄らせて頂いたのですが・・・
さすが!!!写真がとても美しく、彫刻を大切に思いながら、写真を丁寧に撮られているのがよく分かりました!

聖ブノワの足元も、はっきり写っていますね。小さな竜のようなのでしょうか?ミミズのような皺に体全体が覆われていますね。何なのでしょう?あまり気持ちいいものではありません。

ボーリューも見せていただいたのですが、私が行ったときは、教会全体が洗われた後のようで、白くなっていました。でも、中はとても暗かったです。また、アップしますね。

投稿: Cojico | 2008年11月30日 (日) 00時07分

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