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2008年6月22日 (日)

宇宙船のようなクリプトを持つ教会

昨年のこと、8年ほど前に行ったある教会を探してアルバムをめくっていたところ、まるで宇宙船の中のような、太いチューブが何重にもある暗いところで、主人がにこやかに立っている写真を見つけました。(これは2008年に4月撮った写真)

Santes_crypte1

とても変わったというか、惹きつけられる所でしょう?これはいったいどこ?行ったはずなのに何の記憶もない・・・!
ラベルを読む(当時はきちんと書いていた)と、そこは、サント(Sanites)という街のサン・チュートロープ教会(Église St-Eutrope)の中だと分かったのですが・・・

この街ではもうひとつサン・ピエール大聖堂も訪れていて、今まで見たこともないような(実際は見ているのに・・・)太く高い塔が写っています。こんなの見たっけ・・・?悲しいほどの記憶力!

他の写真を見ると、ここにはローマ時代の円形劇場もあるらしく、そこまで見てようやくそうそう!行ったことある!と、かすかに思い出したました。でも、この宇宙船の中のような場所については、全然思い出さないのです。その時から、ここにはもう一度訪れたいと思っておりました。

Sat_plan_2 サント(Saintes)という街は、ポワチエから高速道路でボルドーに向かう途中にある街。当時は車でしたので楽に行けたのですが、この4月に訪れた時はたった一人、公共機関を使うしかありません。フランスは基本的に、旅行する手段は車だと考えられている国なので、こういう地方になると、途端に公共交通は不便になります。

その不便さは、またサントの街の説明を書く時のこととしまして、教会の話に戻りましょう。とにかく駅からタクシーでこのサン・チュートロープ教会(Église St-Eutrope)の正面に着きました。

Sat_eutrope_facade でも、その殺風景なこと(右の写真)!教会の前はあまり広さがなく、道路を挟んで家が迫っています。ファサードも全然装飾がありません。かつては巡礼の人々で溢れていたはずなのに・・・どうしてこんなんに味気ないのでしょう。フランスの教会で、人を招き入れる為のファサードの装飾が、こんなにシンプルなのも珍しいかもしれません。(この理由は、また別の機会に述べることにしましょう。)

Sat_eutrope_tour_2 ただ、教会正面の左側にある鐘楼だけは、巨大でどーんと構えていて、その存在に威圧感さえ感じます。本体の教会に比べ、ど、どうしてこんなんに大きいの?と不思議に思うほど。左の写真の右下に見えるのが、上の写真の工事車両の後ろにみえる扉と同じで、教会の入り口になります。

タクシーのおじさんが30分後に迎えに来てくれることになっているので、それまでに写真を撮らなければなりませんでした。

えーっと、あの不思議な空間はどこ?とせっせと教会内を探しました。あの天井の低さはきっとクリプトだろうと思い、その入り口を探したのですがありません。教会内は私一人。尋ねる相手もいません。教会の外にも誰もいません。ど、どうなってるの・・・?

と、ようやく教会内部の入り口付近に、”クリプトは、外に出て、道路側から入る”というようなこと書いた小さな張り紙を見つけたのです。急いで外へ。

Sat_ent_crypt 道路側?うろうろ・・・あった!ちょうど塔の横に入り口があったのです。入り口を入ると幅広いなだらかな下り坂。目の前は、右の写真のように見えます。力強い幅の広い土台の柱!それもそのはず、あの巨大な塔の下なんですものね。

この中ほどを左に曲がると、一番上の写真のような光景が広がっているのです。
おお!!!そう、そう、まさしくここ!

当時は何も知らず、ただミシュランの本で2つ星になっていたからボルドーへ行く前に寄り道としてこのサントに来、教会にはいり、そしてクリプトの位置を示す張り紙を見て、ここに来たのでしょう。

Sat_crypt_col それにしても、なんというこの天井!アーチの箇所にこんな風に石を並べているとは・・・。8年前に購入していたモノクロ写真入りの薄い本を読むと、このクリプトは上の教会内陣と全く同じサイズだそうで、かなり広く感じます。

側廊も左の写真のように存在します。狭いでしょう?上部の教会の側廊も幅は狭いのです。そして、小さい半円もちゃんと石を同じように並べられていて、丁寧に造られているのを感じます。

この教会は、1081年からクリュニー派の修道士たちによって、聖ユートロプのお墓の周りから、つまりクリプトから造られ、1096年、ローマ教皇Urbain ⅡとRamnuphe司教によって聖別されたのだそうです。

サンチャゴコンポステラの巡礼の宿泊地でもあるので、サントンジュ地方の為に大きな教会を造るのだ、として、特別な計画が与えられたわけですが、それが、このクリプトと教会の内陣を全く重なっている構造にし、同じ広さにする事だったのです。

Sat_pelerins 教会前にあった解説板に、右のような版画が掲げられていました。写真にとったので、その一部分を載せておきます。クリプトは巡礼の人で溢れていますね。

線が細いので、クリックして大きくしてみるとよく分かると思うのですが、男も女も長旅の為かみすぼらしい格好をしているのですが、中ほど小さく見える聖ユートロープの石棺へ、みんな頭を下げています。

確か、オーヴェルニュのサン・チュルナン教会では、巡礼者は地下のクリプトにある聖遺物を直接見ることはできず、内陣に上がる階段の一部分に小さな穴が数箇所あり、そこからクリプトを拝んでいた、という話を聞いたのですが、それと比べて、こちらはなんと寛大な心を持った教会なのでしょう!

今分かっていることは、クリプトの中心にある石棺の中には、男性の骸骨の一部分と新生児の女の子の頭蓋骨が入っているのだそうで、聖ユートロープの頭蓋骨は、なんと上の教会の主祭壇の中の聖遺物箱に入っているのだそうです。

写真をよく見ると分かるのですが、このクリプトには多くの植物の柱頭彫刻がありました。これらは、11世紀のものでサントンジュ地方特有のものだそうです。また、次回写真を載せることにしますね。

サン・チュートロプ教会②(柱頭、上の教会、本来の形について)

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フランスの教会 Les eglises de la France」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
ナント・・行った事がないので興味深いですね。
ボルドーは何度か行きましたが、この場所は
知りません。ナントなら知っていますが(笑)
ボルドのマラソンに行こうと思っていますので
次は、是非、訪ねてみようと思います。
次回は、車だと思います。
ボルドーから南仏までは車で行きましたが、
いろいろ教えてください。

投稿: kju96 | 2008年6月24日 (火) 12時17分

kju96さん

サントはやはりマイナーな街だと思います。だから私の記憶からもなくなっていたのだと思います。
今こうやって、教会に目を向けると、それなりに面白いのですが・・
私はどうも天邪鬼のようで、メインの教会ではなく、マイナーな教会ばかりせっせと書いているような気がしています。でも、それも楽しいかな?

本当は絵についても書きたいのですが、なかなかうまくいかないものですね。kju96さんのところで、少し書かせていただきます。
ボルドーのリベンジマラソンは今年なのでしょうか?

投稿: Cojico | 2008年6月24日 (火) 17時42分

どこをとっても、あまり見ないタイプの造りの教会ですね。クリプトがこんなにしっかりと大きく造られているのはすごい~ 植物模様が多いんですね~。アーチのカーブは、ふつうに石を積んであるんですか?それともあとから装飾としてはめ込んだようなものですか?ほんとに、チューブに見えます。

投稿: あむ | 2008年6月25日 (水) 11時36分

あむさん

ほんとに一度見たら忘れられないようなクリプトでした。でも、写真のほうが印象が強く残るような気がします。

このチューブのようなアーチ、後で線を引いたのかしらとじろじろ見たのですが、所々でひびの入っている箇所が連続でないのを見たりすると、石を積み上げているのだと確信しました。

また、小冊子を読むと(丁寧には読んでいないのですが)、”装飾”という言葉は使われていませんし、”後で付け加えられた”とも書かれていません。ただ、”これは11世紀の作と推定できる。しかしその後、この仕様は一派をなすことは無かった”と書かれているので、クリプトでのこの建て方はこの教会特有だと言えるのかもしれません。
ほんと、興味の尽きないチューブですね。

投稿: Cojico | 2008年6月25日 (水) 22時13分

クリプトが上の聖堂と同じ規模を持つ教会はバーリのサン・ニコラ、アッシジの聖堂、カニグーのサン・マルタンなど数えるほどしかないです。

パイプ状の構造物は有機的で面白かったです。

円形劇場から教会の塔が見えるのですが、ヒッチコックの映画「めまい」の原作小説には回想シーンでこの教会の塔が出てきていました。

サントには凱旋門やアベィ・オ・ダムもあるし、近郊にも多くの教会があるので外せない場所です。

投稿: Pirvs Lvdens | 2008年6月25日 (水) 23時36分

Pirvsさん

コメントをどうもありがとうございます。
クリプトが上の階と同じ広さを持つ教会は、そんなに少ないのですか・・・私はアッシジしか知らないのですが、確かにあそこの下の聖堂は広くてとても素敵でしたね。上より下のほうが気に入ってしまいましたよ。

「めまい」昔見ましたが、全然覚えていません。そうだったのですか!映画の一場面で知っている教会が出てくると、なんとなくうれしいでしょうね。
映画「薔薇の名前」でもオータンとモワサックの合成彫刻が出ているらしいですが、見た当時は教会の興味がなかった頃で、何の記憶もありません。今回の旅行でその両方とも見たので、今度映画を見たときに、注意してみようと思っております。
サントの街の大雑把な紹介の時に、円形劇場からこの塔が見えている写真を載せようと思っております。

サントを”マイナーな街”と書いてすみません。日本からの観光客は少ないんじゃないかと思い書いてしまいました。確かに川に沿った景色は素敵でしたし、ローマ時代の遺跡や博物館もあります。また教会の好きな方には、ここだけでなくサントンジュ地方の重要なロマネスク教会であるアベィ・オ・ダム(私は見ていないのでとてもとても心残りです。)もありますし・・・
Pirvsさんのおっしゃっている”近郊の教会”の中にオーネ(Aulnay)も含まれているのでしょうね。私は見たことないのですが、いつかいつか行きたいと思っている場所です。
そういう意味でサントは見逃せない街だというのは、全くそのとおりだと思います。

投稿: Cojico | 2008年6月26日 (木) 22時25分

「めまい」の原作で身を投げる教会はパリ近郊(車で1時間以内)のロマネスク教会ということになっているのですが、どこかわかりませんでした。

サン・チュートロップのページの画像を入れ替えました。上の聖堂は全く写真を撮らなかったです。

サントの周辺には50以上のロマネスク教会があります(オールネィはもう少し離れているので除いてます)。
その中ではタルモン・シュール・ジロンドの岬に建つEglise Sainte Radegondeが最も印象に残っています。

『薔薇の名前』の映画は先日みたばかりでした。DVDが出ています。ル・ゴフが監修しているのでとてもしっかりしています。
モワサック+オータンの彫刻だけでなくドイツのエーベルバッハでロケをした聖堂や「ボローニャ校訂版」のベアトゥス写本(かなり遊んでます)など興味深いシーンがたくさんあります。

投稿: | 2008年6月26日 (木) 23時35分

こんにちは
今年のボルドー・マラソン行けそうです。
仕事絡みなので、時間が取れるかわかりませんが、大西洋岸のリムーザン地方も訪ねてみたいと思います。
ビアリッツは行った事がありますが、セントあたりも
興味大・・まだ時間が有りますので情報収集をしなければと思います。いろいろ教えてください。
来週は、日本に来ている友人がイギリスの帰りますので
2週間程・・行ってきます。

投稿: kju96 | 2008年6月27日 (金) 12時44分

Pirvsさん

えっ?えっ?サントの周辺に50以上も教会があるのですか!!知らなかった・・・・それじゃ、私はまた行かなければならないのですね・・・
そうそう、Pirvsさんのサイトの岬の聖ラドゴンド教会の写真、素敵でしたね。

サン・チュートロープ教会のクリプトの写真、見ました。円形劇場もクリプトもきれいにいつもながら、綺麗に撮っていらっしゃいます。
祭壇の後ろから撮っている写真には驚きました。あの正面は壁のようになっているでしょう?そのことについて次回に書きますね。

「薔薇の名前」で写本が出ている場面といえば、指につばをつけながら本を読み聞かせている場面ですね。今度借りてきましたら、じっくり見てみます。
いつも興味ある話題を提供してくださり、ありがとうございます。

投稿: Cojico | 2008年6月28日 (土) 00時00分

kju96さん

またイギリスですか!いいですねえ。そして、滞在期間も長くてほんとにうらやましいです。

ボルドーマラソン、今回こそは完走できるよう、がんばってくださいね。また、その日時を教えていただければうれしいのですが・・・
フランスのテレビできっとニュースで流れると思いますので、ネットで少しでもその映像を見ることができたら、現地の雰囲気が分かると思うのですが・・・
とても楽しそうなので、見てみたいです。

ともあれ、行ってらっしゃい!

投稿: Cojico | 2008年6月28日 (土) 00時08分

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