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2008年5月21日 (水)

ブルガリアの小さな世界遺産 ボヤナ教会 Boyana

ちょっと気分を変えて、久しぶりにブルガリアの教会を紹介しましょう。(といっても、詳しいことは知らないのですが、)立派なリラの僧院とは全く異なる、ソフィア近くにあるもうひとつの世界文化遺産、小さなボヤナ教会です。

訪れたのは2001年5月。パリから2泊3日で訪問した最後の日、午後の便でパリに帰る予定だったので、チェックアウトした後ホテルに荷物を預け、ボヤナ教会へ行くことにしました。
手には地図も案内書もなく、情報としては”ソフィアの南8キロにある世界遺産の教会、内部のフレスコ画がすばらしい”ということだけ。ホテルに置かれていた現地ツアーのパンフレットにも”Boyana”という名前さえ載っていない。よほどマイナーな世界遺産らしい。

先ほど見たウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%A4%E3%83%8A%E6%95%99%E4%BC%9Aボヤナ教会)によりますと、長い間修復工事をしており、2000年から一般公開を開始したらしく、私たちが行ったのはその直後だったので、まだ宣伝も満足にできていなかったのかもしれません。

タクシーを呼んでもらって、おまけに行き先もホテルの人に伝えてもらいました。そのほうが確実に伝わるし、運転手もいい加減なことはできないはず、と思って・・・。
タクシーはどんどん走り、20分ほどであまり人気のない山の途中のようなところで止まりました。少し開けた場所とはいえ山の坂道のような場所で、あたりは人影なく店も何もありません。

間違えられては困ると思い、「Where is the Boyana Church?」と聞くと、運転手さんは黙って、お寺の門のような木戸が見える小さな門を指差しました。へっ?あれが教会の入り口?今までみてきた教会と環境があまりにも違うので、えっ、ほんと?と不安を抱いたまま車を降りた次第です。

おそるおそる門を入ると、中は木々がきれいに整えられ小道が造られていたのでほっ。右手にパッとしない小さな建物を見つけたのだけれど、窓の向こうには誰もいないし、案内書などの用紙も何も置いていないので、切符売り場なのかそうでないのか皆目解らない・・・ほんとにここなのかしらと不安ばかり。

”Hallow !, Hallow !, Dose anybody there?”と何度か声をかけ、しばらく待つ事に。山の中なので音は何もしない。気持ちよい太陽の光が緑の間から差し込んでいるだけ。突然、奥からのっそりと男の人が出てきた。小さい紙に何かを書き込み、「向こうに教会があるから、そこで待っていてください。後から係りの人が行きます。」とそっけなく言う。よく解らないけれど、指差された方向へ小道を歩き出す主人と私。周りは気持ちの良い緑の木々に囲まれている。しばらく歩くと、少し広くなったところに・・・あった!

Boyanasoto2

えっ?と思うほど小さい。いったいなぜこれが世界遺産なのだろう・・・上の写真は横から撮ったもの。下の平面図の下側から撮ったもの。入り口は、左の蔦に覆われている部分を曲がったところにある。教会の間口幅は、7,8メートルほどしかないのではないか。

Boyanaplan1_2

左の平面図は、後ほど入った博物館で購入したパンフレットに書かれていたもの。壁の色を変えているように、この教会は小さいながらも右から順に3つの時代につぎつぎと増築されてきたという。

上の写真で、壁の色の違いを見てください。右端のレンガだけでできている一番色の濃い部分、ここが平面図の壁の黒い部分にあたり、1048年、王家の礼拝堂として建築された聖ニコラウス聖堂といわれる所です。当時は壁画で覆われていたそうですが、今では、後陣の下の部分と、北側の壁にのみ見ることができるそうです。

2階のある部分は、レンガの赤みが少し薄いですよね。よく見ると石とレンガからできています。ここが平面図の中央部にあたり、1259年、敬虔なブルガリア王朝時代、貴族セバスト・クラトル・カロヤン(Sebastokrator Kaloyan)によって建てられた聖カロヤン聖堂。この中央部分に描かれているフレスコ画が非常に貴重で有名な箇所に当たります。北壁に、1259年に2階建ての建物が追加された事が記されているそうです。

Boyanasoto4_2

この聖堂の1階は、拝廊(入り口・身廊)かつ寄進者家族の納体堂になっており、2階部分はドーム状で、13世紀の教会だったのだそうです。当時としては、構造上においても建築学的にも見事に調和のとれた建物であったのだそうです。

  蔦で隠れてる部分、左の写真ですと、一番奥の白い部分は、1845年、中央の聖堂の円蓋と円屋根の修復という名目で工事を始めたものの、反オスマン・トルコ政策として、キリスト教の復興また、ブルガリア国民主義の精神的な支えとして、この聖堂を建設したのだそうです。

購入したパンフレットによると、(英文なので不確かなのですが)中世時代、このヴィトシャ地域は王家や貴族たちの別荘地で、要塞化された宮廷のさまざまな建物が集まっていたのだそうです。特にこのボヤナ教会は、ブルガリア中世建築と壁画の最も優れた例の1つで、1979年ユネスコ世界遺産に指定されたのだそうです。

さて、入り口ですが・・・かがまなければ入れないような小さな木戸がひとつ。古くて厚くて重たい木製のドアには、銃弾や傷の跡が生々しく残っていました。そしてその鍵はめちゃめちゃに大きいのです。ガイドさんが突然私にその鍵を手渡し、”あなたが開けなさい”と言うのです。えっ?私がしていいの?といいながら・・・とにかく私がドアを開けました。

Boyananaibu1_3 Boyana_fres4_2

中は、このとおり・・・一面のフレスコ画!と言いたい所なのですが、なんと照明が非常に乏しくて暗い上に、修理の為の足場が所狭しと組まれていて、ガイドさんが手持ちのライトを向けてくれなければよく見えないのです。

奥のほうから説明してくれるのですが、とにかく保存状態が悪く、中央部分の1259年に描かれたという有名なフレスコ画群も剥げている箇所が多くてよくわかりません。ここには、89場面240人の人物フレスコ画があるはず。説明される方向を見ると、立像があるのはなんとなく解るのですが、はっきりとはわからない、という感じ。(以下パンフレット、絵葉書より)

Boyana_fres2_3 Boyana_fres5

左はかなりぼけていますが、光輪があるので聖人でしょう。右は、この聖堂の建立者であるカロヤン(Sebastocrator Kaloyan)と彼の妻ディシスラヴァ(Dessislava)。凛々しい男性とエレガントな女性ですね。服装も豪華そうです。はっきり見える絵もあります。

Boyana_fres6 Boyana_fres10

背景の色が黒や青色ですが、これは13世紀のブルガリア絵画としては、とても珍しいのだそうです。
左の絵は、なんとなくビザンチンの雰囲気を持っていながら、キリストの動きが自然で柔らかい感じを受けます。右の絵は、左の絵の右上の男性(St. Joan)を拡大したものですが、ビザンチンのように金色の光輪を持っているものの顔の表現は影がくっきりと描かれ立体的ですし、髪も乱れているように描かれていて、非常に凛々しく見えます。

このようにこれらの絵の価値は、第2次ブルガリア王国で重要な文化的貢献をしたタルノヴォ派様式(よく知りませんが)の流れを汲むものだそうで、当時東方で主流だったビザンチン様式を破る写実的な描写が特徴なのだそうです。

Boyana_fres12_2 「最後の晩餐」(左)もよく見ると、顔を横に向けて話していたり、手の動きも見られ、結構にぎやかな感じです。下の「キリストの変容」のキリスト、顔の陰陽がはっきりとしていて、やさしいというより意志の強そうな印象を受けます。少しねじれているような体の向きもビザンチン様式から脱皮している事実をうかがい知ることができます。

きっと、この修復作業が終わると、美しいイエスや12使徒などに会えるでのしょうけれど、その作業も見たところ、当時はあまり進んでいるとは思えませんでした。しかし、次のサイトを見てびっくり!こんなだったとは・・・

ボヤナ教会のヴァーチャルツアーはすばらしいです!ぜひともご覧になってください。光が十分にあると、このように見えるのですね。あの当時では想像もできませんでした。今は、もっと見やすくなっていることでしょう。

ボヤナ教会の公式サイトには、歴史そして断面の構造図などが見られます。

Boyana_fres15_2 新しく建築されたらしいボヤナ教会博物館にも寄り、説明を受けました。当然ながら、私達以外誰も見当たらず寂しい雰囲気。薄暗い広間の片隅に売店らしき台もあるのですが、照明がなく、活気もなく、売る気も無いように見えました。買うために声を掛けるのも気が引ける様でしたが、長い間売れなくて色が剥げている薄い小さいパンフレットを3枚と小冊子を購入。

ここからは余談ですが、この見学では二人のアメリカ人男性と一緒でした。ガイドが来るのを教会の近くで待っていると、ガイドらしき人と2人の白人が近づいてきました。その一人はなんと前日、現地のリラ僧院ツアーでご一緒した、アメリカから来ている男性だったのです。思わず挨拶。

前日の話では、彼はアメリカ政府機関の方で、半年前からソフィアに来て、ブルガリア政府に民主化への援助指導を行っているとのことでした。ボヤナ教会に行ったことがあるかを伺ったところ、彼はその名前さえも知りませんでした。忙しくて観光らしいことは何もしていない、とのことでした。その時私たちがこの教会の存在を話したのですが、早速彼も友人をつれて訪れたのでしょう。

ブルガリアがEUに加盟したのが2007年1月、私たちがこのアメリカ人に会ったのは2001年5月。ブルガリアは、こうやって年月を重ねて民主化への道を研究し、アメリカの援助を受けながら、ようやく念願のEU加盟を果たしたのですね。あれから7年、今ではきっと、ソフィア市内の商業活動もかなり活発になったことでしょう。

今手元に、ブルガリアの修道院一覧の小冊子を持っています。中には
・The Rila monastery       ・The Bachkovo monastery
・The Troyan monastery    ・The Rozhen monastery
・The Ivanovo Rock monastery ・The Aladja Rock monastery
・The Zemen monastery  ・The Kremikovtsi monastrey
・The Transfiguration monastery  ・The Kilifarevo monastery
・The Dryanovo monastery  ・The Kapinovo monastery
・Two monasteries in the village of arbanassi St.Nikola and Holy Virgin
・The Cherepish monastery   ・The Shipka monastery

という名が連なっていて、それぞれの建物やフレスコ画が少しずつ載っているのですが、どの修道院も色鮮やかなフレスコ画が生き生きとしていて、非常に興味をそそられます。実際に見たいと思っても、きっと全部非常に不便な所にあるんでしょうね・・・

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コメント

こんにちは
ボヤナ教会、リラの僧院などソフィア旅行の時、行きました・・こんなものか?・・が第一印象でした。
世界遺産ブームも相乗していたので、期待が大きかったのでしょう。
考えてみたら数年前までは東西冷戦下の社会主義国家だった95年の旅・・ひなびた田園風景が続いたので、ソフィアに入った時は、ビックリしました。
美しい街で、他のヨーロッパの都市と変わらない・・市内は至る所でビルの工事中、その側には、古びた教会が
あり、美術館の中庭にも教会が、全体的に丸い教会が多かったですね。イスラムとの関係でしょうか、当時の通貨レヴァだったでしょうか・・ホテルが安くてもう一日、泊まろう・・と結局、5日間に、何処に行っても工事中、・・でもそれが新鮮でした。
ちなみにボヤナ教会博物館は、なかったと思います。
看板や観光案内所なるものもお粗末で、入り口に係員が
数名いたような・・・兎に角、これが世界遺産・・でした。今に思えば・・もう少し研究心が必要だったのではと後悔しております。
多々、そう言う旅行が多い・・情けない次第です。
でも、ソフィアからギリシャまでの鉄道の旅は・・
思い出に残る旅となりました。

投稿: kju96 | 2008年5月24日 (土) 12時08分

kju96さん

丁寧にコメントをありがとうございます。
さすがkju96さん、ほんとにいろんなところを旅行されてますね。95年にソフィアに行かれたのですか・・・もし、ルーマニアからブルガリアに入ったのであれば、確かに寂しい光景だったでしょうね。私もブカレストからブラショフまでは行ったのですが、その景色は、共産圏だったというだけでなく、チャウシェスク独裁という悲しいルーマニアの歴史そのものの光景が広がっているような気がしました。

そうそう、ビル(ビルはすべて新しくきれいでした。)の谷間にあった教会は、聖ゲオルギ教会といい、3,4世紀の建物だそうです。入り口に係員の人が立っていましたよ。ここにも確か内部にフレスコ画が描かれていましたと思います。アルバムを見直さないといけませんが・・・。

私もパリ滞在時の旅行は、なんの知識もないまま見ていたものが多く、もったいないことをしたなあ、と、その当時の自分の浅はかさを後悔するばかりです。

ソフィアからギリシャまでの鉄道の旅って、どんなのだったのでしょうか・・・興味深深です。またいつかkju96さんが書いてくださるのを待ちましょう。


投稿: Cojico | 2008年5月25日 (日) 21時07分

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