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2007年7月23日 (月)

金刀比羅宮 書院の美① The Mural Art of Kotohira-gu Shrine

Panphface 7月7日から始まった「金刀比羅宮 書院の美 応挙・若冲・岸岱」を見てきました。この東京で、讃岐・金毘羅さんの表書院や奥書院の襖絵や障壁画が見られるとは、なんと嬉しいことでしょう!

現地でも若冲の絵のある奥書院は一般公開していない(2004年に公開したのは知っていましたが、見ていません。)し、応挙の遊虎図は、2003年末開催された見事な「応挙展」で、関西では展示されていたのに、東京では展示されなかった(どうして?会場が狭いから?)ので、前々から見たいと思っていたのです。金毘羅さんまで行かなくてもその願いが叶うなんて、ほんとうに有難い事です。

会場は、東京芸術大学美術館。実際の部屋の雰囲気を味わって欲しいという配慮から、展示も約130面の襖を移動し、両書院の各10部屋を再現しているように作られています。たしか、2003年東京国立博物館で開催された「国宝大徳寺聚光院の襖絵展」も同じように方丈障壁画が再現されていましたね。あの時は、ゆったりとした空間で(回りが暗くて、少々寂しい雰囲気もありましたが)、狩野松栄、永徳、それぞれが作り出した絵画空間をじっくり味わう事が出来た上に、彼らの画風の違いもよくわかりました。有効な展示方法だと思います。

今回も、各部屋を廻っているようで、それぞれの襖絵がかもし出す雰囲気を味わえるようになっていたのですが、やはり、本来あるべき庭園などが無いので、少々窮屈な感じがしたのが残念です。

でも、展示されている襖などはすばらしいです。表書院を担当している応挙の絵は、部屋の用途に合った題材が描かれ、余計な背景を描かず、すっきりとまとまっていて見事だと思いました。

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例えば、第一の間である「鶴の間」(上図)。客人が緊張して玄関から部屋入った時でも、落着いていられるように、何も描かれていない空間を広く取り、大きな鶴がゆったりと舞い降りたり、羽を休めたりしている図が描かれています。変な人工的な作為が見られず、気持ちよい部屋だと思いました。

Chioninn 例えば、右図は、応挙より100年ほど前に描かれた狩野派による知恩院方丈の「鷺の間」なのですが、時代が異なる上に黒ずんでいるので比べるのも酷ですけれど、太い木の色が濃い上に、群がる白鷺達よりも沢山描かれている下向きの細い枝が目立ってしまい、人工的な構図だということが強調されています。

これはこれで、当時は綺麗だったのかもしれませんが、もう一度、応挙の絵に目を戻すと、空間をよりゆったりと取っているため、それが優雅な鶴の様子を強調し、客人もゆったりさせるのではないかと思われました。

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次の「虎の間」。ここは客人との面会の場だったそうです。3方向に見える墨だけで描かれた8匹の虎は、まるでこの金刀比羅宮の威厳の象徴のようです。客人は、この虎を見て、緊張したかもしれませんね。

部屋の角も見所の一つです。直角に曲がっている場所を木の枝でつなげ、上手に空間を使っています。もう一方の隅は、岩が繋がっていて、途切れたようになっていません。応挙は現地には赴いていないのだそうですが、ほんと上手に作成されています。

Tora1 見学者達は右の虎を見て、口々に「これは猫ね。」などと言っていましたが、確かに怖そうなのにとても可愛い。これも仕方がないですよね。当時の人は、中国から入ってきた虎の皮しか見たことがないのですから。

上の襖のような水飲み虎(パンフレットにも出ている)をみていると、南禅寺の狩野探幽作「水呑の虎の図」を思いだしました(下図:実際は、硝子を通して部屋を覗き込むので、外光が反射したり、部屋が暗かったりして、こんなにはっきりに見えません)。狩野派の虎は、よく竹林と一緒に描かれていますが、改めてもう一度見直すと、探幽の絵も空間の取り方がうまいなあと感心してしまいました。

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さて次の間は、格の高い客人を迎える部屋「七賢の間」です。人と面会するときは、賢明であれ、ということなのでしょうか。

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話は少しそれますが、昔、長谷川等伯の「松林図屏風」を見て思ったことは、「水墨画は、描く美しさより、描かない美しさがより目立つ」ということでした。かすれている部分、見えていないようで見えている部分などがほんと美しいのです。

この応挙の絵を見ていても、人物表現より、背景の竹林の静かな奥行きのある表現に同じ思いを抱いてしまいました。

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さて、表書院最後の間、貴賓を迎える上段の間と二の間がある「山水の間」。上段の間には、応挙お得意(応挙展での”瀑布”は立派でしたね)の「瀑布小松図」(上図)、そして、二の間には長閑な「春景山水図」が広がっています。

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二の間から上段にお座りになる人を見ると、背後に力強い瀑布が見え、それから威厳を感じてしまいます。逆に、上段から二の間をみると、長閑な光景が広がっているため、平民の平和を感じずにはいられないのではないでしょうか。うまく考えられていますね。

はやり、実際の畳の上で見ると、雰囲気はもっといいのでしょうね。贅沢は言えませんが・・・

長くなってしまったので、次回、岸岱や若冲の作品感想を書くことにします。

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日本美術 L'art japonais」カテゴリの記事

コメント

年をとりますとエレベーターの上り下りもつらいです。

投稿: いづつや | 2007年7月25日 (水) 18時25分

応挙は猫好きだったんですかね

投稿: いづつや | 2007年7月25日 (水) 18時26分

いづつやさん、はじめまして。

ご訪問、ありがとうございます。
ほんと、この愛らしい虎をみていると、猫も好きだったのかしら、と思えるほどです。
でも、彼の可愛い子犬の絵をみたり、また彼の律儀さを考えると、やはり犬好きのような気がします。

美術展を廻るのも大変ですよね。気力、体力がないと絵も面白く感じられませんね。
お互いにがんばりましょう。
これからも、宜しくお願いいたします。

投稿: Cojico | 2007年7月25日 (水) 21時01分

暑中お見舞い申し上げます。
日本も暑いと聞きましたが、ヨーロッパもとても暑いです。
ところで、もうすぐ日本に帰国予定なのですが、日本で芸の足しになるようないい展覧会が見れたらいいなと、思っていたおりCOJICOさんのブログを拝見。9月9日までとのこと、是非とも見に行きたいです。特に鶴の絵楽しみにしています。(今、光琳鶴を利用し、『ながぐつをはいたつる』というお話とイラストを描いているので)
それでは、また!

投稿: HITTER 鶴 | 2007年7月27日 (金) 18時20分

HITTER 鶴さん、こんばんは。

暫らく拝見していなかったので、先ほど読ませていただきましたら、なんとコンクールで最優秀賞を受賞されていたのですね。
Felicitazioni per il Suo successo!

今後のご活躍も、ブログで読ませていただきます。

さて、イタリアも今、暑そうですね。40度を越している所もあるとか・・日本は少しずつ梅雨が明け、本格的な夏に入ろうとしています。成田に着くと、空気がじとっと重いのを感じるでしょうね。

さて、この金毘羅宮の展覧会ですが、純粋な日本を楽しめそうですよ。海外に長くいらっしゃると、こういうのも新鮮で molto beneなのではないでしょうか。

鶴の形で面白い絵としては、若冲の「鶴図屏風」(Etsuko&Joe Price Collection)は如何でしょうか。ご存知かもしれませんが、、以下でもご覧になれますので記しておきます。

http://f.hatena.ne.jp/jakuchu/20060510095359

応挙の洗練された絵とはまた違った楽しみがあります。
参考になればよいのですが・・・

帰国が有意義なものとなりますように。

投稿: Cojico | 2007年7月27日 (金) 22時23分

こんにちは、コメントありがとうございました。
28日旅から戻りました。
アメリカも厚かったのですが、日本の暑いですね。
”金刀比羅宮 書院の美”良さそうですね。
伊藤若冲など福岡国際美術館で今年見ましたが、すばらしかったですね。
讃岐金毘羅さんへは、船の関係の仕事やヨットも乗りますので
祈願に出かけること数回と多いのですが、書院の美は一度だけ
展覧会の方が内容が豊富です。
あの階段を上がるのは大変・・・・上から見下ろす景色は最高ですね。
cojicoさんのブログ・・ゆっくり読ませてください。
楽しみにしております。


投稿: kju96 | 2007年7月31日 (火) 12時59分

Cojicoさん、こんにちは。
早速ブログへ遊びに来てしまいました。
今日は久しぶりにお会いできて嬉しかったです。
また楽しいお話を聞かせて下さいませ。(^^)
ciao! ciao!

投稿: zunko | 2007年7月31日 (火) 18時29分

kju96さん

お帰りなさい。またすぐにヨーロッパへ出発されるのでしょうか?
早速のコメントありがとうございます。ヨットも乗られるのですか!ほんとにいろんな経験をされていますね。

昔、魚釣りが好きだった頃、何回か船に乗りましたが、どうもあの揺れが苦手で(その度に吐きました・・・)、今は船から遠ざかっています。

金毘羅さんへは2度ほど登ったのですが、当時はこのようなすばらしい書院があるとは、全然知りませんでした。こうやって見られたことに感謝です。

私のブログは、日記というより情報発信のようなもので、あまり面白くありません。まだ初めて1年程で、情報も少ないので、これからも少しずつイタリアとフランスの内容の充実を図っていこうと思っています。

私こそ、kju96さんの記事を楽しみにしております。

投稿: Cojico | 2007年7月31日 (火) 21時30分

zunkoさん

コメント、どうもありがとうございます。
私も久しぶりにお会いでき、楽しい時間を過ごせて、ほんとにうれしかったです。あの料理も美味しかったですねえ。

数ヶ月ぶりに授業に出席して思ったのですが、やはり、勉強は友人がいないと楽しくできませんね。クラスへ出て、先生だけでなくみんなの話も聞き、共に笑い苦しみ勉強する、それが、勉強を続けることが出来る秘訣だと、今日、つくづく感じました。
これからも、お互いに頑張りましょうね。

さて、zunkoさんのお店、可愛い商品が並んでいますね。購入をお願いするかもしれませんので、その時は、宜しくお願いいたします。

投稿: Cojico | 2007年7月31日 (火) 21時44分

Cojicoさん、久し振りにブログを訪ねました。

虎の襖絵は秀逸ですね。力強さといい、まるでいまにも飛びかかりそうな迫力すら感じます。それにしても実際の書院を再現して襖絵を展示するとは、心にき演出です。

それはさておき、画面構成や色のバランスなど、ますますこのブログは美しくなりますね。次回が楽しみです。

投稿: もりたたろべえ | 2007年8月 2日 (木) 00時00分

たろべえさん、ありがとうございます。

応挙の絵をみていつも思うのですが、彼の絵はいつもバランスがよく、丁寧で美しく、安心してみていられるなあ、ということです。実際の絵を見る前、本でしか知らなかった頃、優等生的な絵だけれど魅力がないなあ、と狭い考えでいましたが、「応挙展」で実際のすばらしい絵の数々を見たとき、もう一瞬でファンになってしまいました。

”ブログが美しい”という感想、とても嬉しい言葉なのですが、実際自分では、写真が多いのは、私の文章力が無いのを補う為のような気がしています。もっとうまく表現できたら、きっと写真などいらないのでしょうね。

たろべえさんのお話も楽しみにしております。

投稿: Cojico | 2007年8月 2日 (木) 21時37分

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