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2007年5月12日 (土)

佐伯祐三と佐野繁二郎展

退院した日の2日後、こんなに早く行けるとは思ってもいなかった美術館に行くことができた。やはり、外出はいい。

5月5日、快晴。あまりにも天気が良いので、ドライブだけなら出来るだろうと目的も無く、首都高を南下。車の中で、海の好きな主人(私は山)の、”三浦半島なら近いよ”との意見に賛成し、葉山に行くことにした。他の場所は、昔魚釣りや磯遊びなどで行った事があったのだけれど、この土地だけはなかったのだ。

Hayama1 高速道路は、うそのように快適。葉山の御用邸があるくらいだから、どんなに素敵な街だろうと期待していたのだが、実際は、道路のひどく狭い住宅街。こんなはずでは・・・と車を走らせていると、あっ!と神奈川県立美術館を見つけた。

こんなところにあったのかと、びっくり。実は前から一度来てみたかった美術館だったのだ。ばんざーい!いい時間つぶしができる。

Saekisano_panph_1 現在の展示は、「パリのエスプリ 佐伯祐三と佐野繁二郎展」(4月7日~5月20日)。佐伯祐三は、2005年9月に練馬区立美術館で開催された、140点にも及ぶ絵画や資料を見ているので、彼の生涯や絵は大体頭に入っている。しかし、佐野繁二郎という人物は知らない。さらにこの二人、どのような関係なのだろう?

2歳違いの二人は、ともに大阪の出身。年譜では、佐野が15歳ごろ佐伯に会い、絵に興味を持ったとされている。さらにこの二人、東京に出てからも交際が続いていたようで、87歳まで生きた佐野が書いた、30歳で夭逝した佐伯への追悼文や思い出話なども展示し、二人の関係を浮き彫りにしていた。

はっきりとは覚えていないのだが、「佐伯のファンはなぜか女性が多い」とか「佐伯は執念深い」とか、今までに聞いたことのない感想が書かれていて、おもしろい。

特に良かったのは、「佐伯の絵からは、音楽が聞こえる。音楽には音とリズムがあるが、彼のはリズムのない音が聞こえる。」というメッセージ。パンフレットの上図、佐伯のcafe正面図とか壁の絵を見ながら、音を聞こうとした・・・リズムのない、低く流れるコントラバスの音のような気がした・・・

Sano_selfp_1 一方、佐野のセンスたるや、斬新ですばらしい(パンフレットの下図)。油絵だけでなく、本の表紙やカットなどが、数多く展示されている。悩んだ時期もあったと書かれていたが、お金持ちの家に育った”ぼんぼん”の本来の精神の自由さというか、おおらかさが開花していると思った。

特に、パンフレットの裏に掲載されていた佐野の自画像(右図)。少し気味が悪いけど、”cool!”。

佐伯の絵に戻ろう。佐伯がパリで「アカデミズム」とヴラマンクから批判された絵は、パリ到着後(1924年)に描いた「裸婦」だとか。実際にはどれを見せたのかは知らないが、少なくともこの頃描いた絵は、印象派の影響を強く受けている。

自信を持って見せた絵に対するあまりの反応に、彼のショックは計り知れない。それから”自分の絵探し”が始まるのだが、やはり苦しんだ時に描いたパリ街角の絵はすばらしい。この美術展では、広告の壁や新聞紙が描かれた店先、人のいないカフェなど人気の高い絵は少なく、少々物足りなく感じるが、佐伯の全体像を見せる配慮はされている。

Saeki1 彼は1928年8月に亡くなっているのだが、左図はその数ヶ月前に描かれた絵。決して感激を与えるようなものではないが、練馬で忘れられない絵となった。

彼の経歴の詳細を知らなくても、ただ年代別に絵だけを追ってみていけば、分かってくる、だんだん精神的におかしくなっていくのが・・・。平衡感覚が失われていくみたいに、絵が非常に乱れてくるのだ。

この絵を見たとき、”彼は狂った!”と私は思ってしまった。彼の焦りが絵から感じられる。後で経歴を読んで、彼が自殺未遂を起こした後、精神病院に入り、2ヶ月弱後この病院で亡くなったことを知った。その時の図録に寄ると、「精神病院での佐伯は、死への懼れや罪障感、制作へのなお留まることのない願望などが入り混じり、あるいは夜通し泣き、あるいは念仏を唱え続ける日々であった」と書かれている。

彼の状況を想像するだけで、こちらも苦しくなってくる。どうしてなんだ、どうしてなんだ、と自分に問い続けただろう。もっと長く生きて描いて欲しかった・・・、彼ならその後どういう風に画風を変えていっただろう?彼の絵のもっともっと長い変遷を見たいと思った。

Hayama2 (たろべえさんからのメッセージの後で追加)ちなみに、美術館からの眺めはすばらしいので、写真をアップしておきます。夕方なので光がもうないですが・・・。当日は、この美術館の喫茶店でゆっくりしました。

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コメント

cojicoさん

神奈川県立近代美術館葉山(通称葉山館)は、行ってみたいところです。実は大学時代のクラスメートが、金沢の美大の先生になったので、実習で学生を連れて東京近郊の美術館巡りをすのですが、神奈川地区では、横浜美術館と葉山館が入っています。

 バリヤフリーでも有名な美術館ですね。是非、行きたいと思います。

投稿: もrたたろべえ | 2007年5月14日 (月) 18時52分

たろべえさん

お友達が美大の先生ですか!うらやましいです・・・たろべえさんも同じような講義を受けたのでしょう?私も学生のとき、美術に関する授業を受けてみたかったです。

さてこの美術館、バリヤフリーで有名だったとは全然知りませんでした。とても気持ち良かったですよ。広場や喫茶店からの眺望がすばらしく、天気がよければ海でも遊べ、楽しい時間が過ごせそうです。

近くに「山口蓬春記念館」があったのですが、時間的に晩くなり、寄れなかったのが残念です。

道路が狭い為、土日は渋滞になりそうですが、素敵な公園や海岸もありそうですので、美術館に行かれた時は、回りも楽しんでらしてください。

後で、広場からの写真を追加しておきます。

投稿: Cojico | 2007年5月14日 (月) 19時58分

Cojicoさん、美術館に行かれるようになって良かったですねヽ(^o^)丿
葉山の美術館は以前1度だけ行ったことがあります。海が見えて気持ちが良くって...Cojicoさんも展覧会だけでなく美術館も楽しまれたご様子が伝わってきました♪

さて、佐伯祐三はあまり数を観たことが無く、ましてや佐野繁二郎も存じませんでした(^^;;
佐伯の晩年の作品も初めて拝見しましたが、パリの壁をスタイリッシュに描いていた画家の作品とは思えず...心の痛くなるような絵ですね。彼は自分の生を急ぎすぎたのかもしれませんね。

ところで、佐野の自画像はcoolだったのですか?Cojicoさんご推薦とは...生で見たくなりますね(笑)

投稿: 花耀亭 | 2007年5月16日 (水) 01時30分

花耀亭さん

先週は体調がすぐれなかったようで、大丈夫ですか?

久しぶりの外出はとても気持ち良く、自由に動けることの有難さをひしひしと感じました。

佐伯祐三ですが、私も練馬区立美術館で見るまでは、有名な絵しか知りませんでした。一人の画家の変遷を見るのは、面白いですね。

この美術展では、最後の変に崩れた作品は少ないので、結核の悪化に伴い、精神的に追い詰められていく様子は分からないかもしれません。

佐野の作品は本や小冊子の表紙など小さいものが多数展示されていて、センスはいいものの、最後は見るのに疲れてしまいました(体力が落ちているからかも?)。

県外となると、気持ちが乗っている時か、もしくはよほど興味のある美術展でないとどうしても億劫になってしまうので、今回はラッキーでした。

話は変わりますが、私も紅茶党です。

投稿: Cojico | 2007年5月16日 (水) 17時25分

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